絵本紹介

題名
びょういんにおとまり
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
文=バラージュ・アンナ、絵=ダーノシュ・ユディット、訳=うちだひろこ 風濤社 2009 ハンガリー 入院、自分の体験、体験の受容

【おすすめポイント】ユニークな本! よくのどが痛くなるので入院することになった「ぼく」が自分の体験を紹介します。それは黒い文字で書かれ、その下に緑の字で「あなたは どんなのりもので びょういんへ いきましたか?」「かんごしさんは あなたに どんなことを しましたか?」など、自分の体験を振り返ることを促す文が続きます。この問いかけに答える文を書き、その時の絵を描いたら「わたしがにゅういんしたとき」という本が出来上がりそうです。子どもが自分の体験を整理するのは大変なこと。この本はそのよき手助けになりそうです。

題名
おにいちゃんがいてよかった
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=細谷亮太、絵=永井泰子 岩崎書店 2003 日本 患児のきょうだい、きょうだいとの死別

【おすすめポイント】みなみちゃんの胸の中にはおにいちゃんとの思い出がいっぱいです。母親に「みなみは、がんばって、よくおるすばんしてくれたね。ほんとうにありがとう」と抱きしめられることで、兄の死を悲しみや寂しさともに受け止めます。死にゆく子どもを抱えることになった親の混乱はいかばかりか。それでも、できるだけ残される子どもにも心を寄せたいものです。大人は(親は)強くなければならない、と改めて身の引き締まる1冊です。

題名
ぼくのいのち
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=細谷亮太、絵=永井泰子 岩崎書店 1999 日本 白血病、退院後

【おすすめポイント】主人公の年齢は明示されていませんが、2~4年生位でしょうか。退院して数年後に「なんの病気だったの。」と母に聞き、「プロのさとう先生にきくのが いちばんだね」と言われて主治医にたずね、自分が白血病だったことを知ります。一緒に闘病したあの子やこの子が元気にしているといううれしい近況も聞けたけれども「一番仲良しだったあの子はなおらなかった」という事実も知った主人公。その後、自分を取り巻く世界が輝いて見えた彼は、きっとこれから、自分の命も人の命も大切にできる人に育つことでしょう。

題名
オチツケオチツケこうたオチツケ―こうたはADHD
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=さとうとしなお、絵=みやもとただお 岩崎書店 2003 日本 ADHD、注意欠陥多動性障害

【おすすめポイント】この絵本を読み終わった時、泣きました・・・ 「ぼく どうしてイイコになれないんだろう ぼくはどうしてワルイコなんだろう」と自分を責めるこうたくん。でもいいDrと出会い、こうたくんを見るお母さんの目が変わり、周囲も変わり、こうたくんは最後にこうつぶやきます。「ボク スグ イイコニ ナレナイケド デモ ボクハ ワルイコジャ ナインダ」 子どもが「ボクはワルイコだ」と思った時の絶望の深さを知ることができるという意味で、ADHD以外の子どもと接するうえでも参考になる絵本です。

題名
たっちゃんぼくがきらいなの-たっちゃんはじへいしょう(自閉症)
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=さとうとしなお、絵=みやもとただお 岩崎書店 1996 日本 自閉症、自閉症児

【おすすめポイント】たっちゃんの不思議(に思える)行動を「こころのでんぱがくっきりとどかない」と説明するだけでなく、「こまったとき なきたくなったとき たっちゃん だれにもあまえられない だから たっちゃんのこころは いつも ふあんでいっぱい」とたっちゃんの気持ちをイメージしようと試みていること、「周囲はこういう風に接したらいい」ということは一切出さずに「たっちゃんはちょっとかわってるけど たっちゃんはきみとあそぼうとしないけど けっしてきみをきらってるわけじゃない」と締めくくっているところが秀逸です。

題名
わたしたち手で話します
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=フランツ=ヨーゼフ・ファイニク、絵=フェレーナ・バルハウス、訳=ささきたづこ あかね書房 2006 オーストリア 聴覚障害、子ども、手話、指文字

【おすすめポイント】耳が聞こえないリーザと自分は聞こえるけど聞こえない両親を持つトーマスが、聞こえる子どもたちの「聞こえない人はどうするの?」という素朴な疑問に答えます。聞こえない人の生活は、決して「困ることやできないことだらけ」ではありません。「こうしたらわかる」「こうしたらできる」という工夫がたくさんです。「そうなの。知らなかった」と様々な工夫に感心し、それを受け入れる子どもたち。「何ができないか」という視点ではなく「どのような工夫をすればいいのか」という視点で生活を見ることの大切さがわかる作品です。

題名
わたしの足は車いす
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=フランツ=ヨーゼフ・ファイニク、絵=フェレーナ・バルハウス、訳=ささきたづこ あかね書房 2004 オーストリア 子どもの車椅子生活、ともだち

【おすすめポイント】車いすの少女アンナが初めておつかいに出かけます。助けてほしい時に助けてもらえない心細さ、自分でできることなのに先回りでおせっかいされる腹立たしさ、「自分はただおつかいに行ってるだけ」なのに「まあかわいそう、おきのどく」と言われたりジロジロ見られたりすることへのショック。でもお使いの途中でアンナには友人ができます。太っていることをまわりにからかわれるジギーです。ジギーとの愉快な道行きですっかり元気になったアンナ。子どもには、「わかってくれる友人」が必要だなぁとつくづく思える絵本です。

題名
障がいって、なあに?-障害のある人たちのゆかいなおはなし-
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
絵・文=オードリー・キング、訳=久野研二 明石書店 2004 カナダ 障がい、障がい者の視点、障がい者の可能性

【おすすめポイント】厳密に言えば、この絵本は「子どもの病気、障がいがテーマ」ではありません。しかし子どもの障がい者も登場しますし、何より素晴らしい絵本なのでぜひご紹介したく、取り上げました。世の中には、「障がい者はかわいそう」「障がい者はけなげな頑張りや」「障がい者は純粋無垢で天使のよう」と画一的な見方をされる場面が多く見られます。このステレオタイプな概念を、ユーモアで打ちこわす爽快さ、ぜひ味わって下さい。

題名
おにいちゃんが病気になったその日から
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
文=佐川奈津子、絵=黒井健 小学館 2001 日本 患児のきょうだい、きょうだいの入院

【おすすめポイント】病気の弟を持った著者が、自らの体験をもとに書いたおはなしです。この絵本を読むと、病気の子どもを支えることも大切だし、その子のきょうだいを支えることも大切だということがわかります。目の前にいるはずなのに、透けて見えるお父さんやお母さん。”心ここにあらず” 我慢している「ぼく」とは違う世界にいってしまって、触れることもできない・・・ 絵から淋しさやつらさが伝わってきます。病気の子のきょうだいは、何も言わなくても(何も言えないまま)たくさん我慢したり、がんばったり、しているのです。

題名
レアの星-友だちの死-
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
文=パトリック・ジルソン、絵=クロード・K・デュボア、訳=野坂悦子 くもん出版 2003 ベルギー 小児がん、友だちの死、デス・エデュケーション

【おすすめポイント】仲良しのレアが入院してしまった時、ロビンは自分のことを責めます。自分があの時あんなこと言ったのがいけなかったんじゃないか。意地悪したせいじゃないか。「レアの病気は、きっとぼくのせいだ。」 大人には思いがけない論理ですが、子どもは、家族や大切な友だちが病気になった時「自分のせいだ」と責めることがよくあります。病気の人がいる場合、その周囲に傷ついている子どもがいるかもしれません。「あなたのせいじゃない」と抱きしめてあげて下さい。

題名
ポンちゃんとリウマチマン
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
医事監修=武井修治、おはなし=たにぐちあけみ、え=てしがはらさだこ 発行=あすなろ会 2008 日本 若年性関節リウマチ、JRA

【おすすめポイント】このお話しは、もともと、作者が自分の娘のために考えたものです。「我が子が自分の病気のことを理解し、自分で伝えられるようにならなければ。そのためには『こんな風に周りの人に伝えるやり方もあるよ』と示さなければ」という願いからリウマチマンというキャラクターが生まれました。書店流通はありませんが、あすなろ会から購入することができます。あすなろ会へはコチラからどうぞ→ 

題名
ちいさなあかちゃん、こんにちは!
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=リヒャルト・デ・レーウ、マーイケ・シーガル、絵=ディック・ブルーナ、訳=野坂悦子 講談社 2007 オランダ 未熟児

【おすすめポイント】みなさんご存知、ミッフィーちゃん(うさこちゃん)のディック・ブルーナが絵を描いています。予定より3ヶ月早く生まれた赤ちゃんと、その退院を待ちわびるご家族の写真が織り込んであるので、小さく生まれた赤ちゃんを取り囲む空気感が伝わってくるよう。小さく生まれた赤ちゃんを大事に大事に育てなければいけないのはもちろんですが、心配・不安・期待、いろんな思いを抱えているお兄ちゃんやお姉ちゃんへの配慮も必要だということが伝わります。

題名
元気になってねフェンディ 子ども病院のチャイルド・ライフ・スペシャリスト
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
写真・文=大塚敦子 小学館 2007 アメリカ 小児の心臓の手術

【おすすめポイント】この絵本の主人公は、むしろフェンディでなく心臓病で手術に臨むフェンデイを支えるチャイルドライフスペシャリストかもしれません。日本ではあまり馴染みのない職種ですが、これを読むと病気の子どもには意識的に「正常な成長・発達」の場を整えてあげることが必要だということがよくわかります。看護師、母親、父親、教師、患児の周りのみんなで子どもの成長発達を支援していきたいものです。

題名
げんきになるって! ―リサがびょういんへいったとき―
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作・絵=アン・フォッシュリンド、訳 菱木晃子 岩崎書店 1996 スウェーデン 小児の手術

【おすすめポイント】作品中では病名ははっきりしませんが女の子が腹痛から入院、手術して退院するまでを、彼女の視点で描いてあります。一人ぼっちで入院する淋しさ、手術に感じる恐怖、病気がよくなってきたことを実感する喜び。「手術(入院)さえすれば、ちゃんと元気になる」ということがほぼ保障されている病気の状態で入院して、怖がっているお子さんに読むにはいいと思います。

題名
チャーリー・ブラウン なぜなんだい? ―ともだちがおもい病気になったとき―
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
作=チャールズ・M・シュルツ、訳=細谷亮太 岩崎書店 1991 アメリカ 小児白血病

【おすすめポイント】白血病の女の子が化学療法の影響で髪がないことを学校でからかわれたり、その子の姉妹が「あの子ばっかり注目を浴びている」と複雑な気持ちになったり、という現実に起こりうるエピソードも盛り込んであります。ストーリーはやや冗長なので、白血病の本人や家族以外が読んだらちょっと退屈に感じる部分もあるかもしれません。“スヌーピー”が読ませてしまうという力は大きいです。

題名
さっちゃんのまほうのて
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
たばたせいいち、先天性四肢障害児父母の会、のべあきこ,しざわさよこ/共同制作 偕成社 1985 日本 先天性四肢障害児

【おすすめポイント】絵と文章が素晴らしく合っています。さっちゃんの怒った顔、お母さんのせつない顔、思わずわが子や自分と重ねて見入ってしまいます。文章や具体的なエピソードが、さすが父母の会が作った本と唸らせます。先天性四肢障害の本人や家族でなくてもぐっと胸にせまってくる絵本です。「さちこの手、どうしてないの? 大人になったら生えてくる?」こうわが子に聞かれたら、あなたならなんと答えますか?

題名
どんなかんじかなあ
作者 出版社 初版 文化背景 キーワード
ぶん=中山千夏、絵=和田誠 自由国民社 2005 日本 車椅子,四肢麻痺

【おすすめポイント】「どんなかんじかなあ」というタイトルが秀逸です。「どんなきもちかなあ」じゃないんです。聞こえないって、見えないって、“どんなかんじかなあ”と素直に想像してみるひろくん。ラストが衝撃的で、ここに驚く自分は何なんだろうとまた考えてみたり。この本は、小学校低学年にはまだ難しいかもしれません。読んでもらうなら中学年以降から、自分で読むなら高学年以降からという印象を受けました。